古典本曲 第一集

山

三谷(さんや)

中京所伝の曲。曲中に三つの起伏があり、それが曲名の由来という説もある。同名異曲も多い。

巣鶴(すづる)

古伝巣籠。鶴は親子の情愛の深い鳥といわれ古来霊鳥とされている。「鶴の巣籠」という名の同名異曲は各地に伝わっている。古伝とあえて付されていることからも各地に伝わる曲の原形に近いと思われる。

手向(たむけ)

伊勢地方の曲。レクイエムとエレジーを合せた曲である。

下り葉(さがりは)

津軽根笹派の曲でコミ吹きという。あたかも北風が根笹の藪を吹きぬけていくような息の使い方とリズム感に特徴がある。

一二三鉢返し(ひふみはちがえし)

関東地方の曲。琴古流本曲三十六曲中の第一番目の曲。托鉢中の調べと伝えられる。

月

心 月(しんげつ)

「心月孤月 光呑万象」という澄みきった境地を表す曲といわれる。全体に静かな調子であるがそれを突き破る後半冒頭の旋律が全体の静けさを強調している。

虚 空(こくう)

東北地方の曲。七百年前の調べとも伝えられ、曲名は一切の事物を包容しその存在をさまたげない無為法を意味するという。

手向(たむけ)

伊勢地方の曲。レクイエムとエレジーを合せた曲である。

息 観(そっかん)

出所不明。低音の一息一息に自己の没入させ、心眼に映して本質を見つめることをめざすと伝えられる。

古典本曲 第二集

波

打 波(だは)

出所不明。十字街頭に托鉢した調べと伝えられる。「さんや」系の曲で、繰返し打ち寄せる波のイメージを持つ。発音が同じ「打破」にも通じ、殻を破って新しいものを生み出す力の表現にもなっている。

山 越(やまごえ)

九州地方伝承の鈴慕系の曲。鋭角的な旋律の動きで躍動感あふれた曲である。

根笹調(ねざさしらべ)

津軽根笹派の代表的な曲。第一集に収録の「下り葉」の前調べとして演奏されたともいうが、「松風」などとともに今日では独立した根笹派の代表的作品として広く愛好されている。

産 安(さんあん)

新潟地方伝承曲で、古来より安産祈願の曲とされている。幕末の名手・神保政之介が好んで演奏したことから神保三谷とも、また奥州薩慈(さじ)とも呼ばれる。

本 調(ほんしらべ)

浜松地方伝承曲。簡素直観の調べである。

鶴の巣籠(つるのすごもり)

仙台地方伝承曲。夜明けの描写に始まり、鶴のさまざまな飛翔の姿や鳴き交わしの様子を表現している。同名異曲が数多く伝わるが、それらの中で最も多彩な技巧を用いた華麗な調べである。

巣鶴(すづる)

古伝巣籠。鶴は親子の情愛の深い鳥といわれ古来霊鳥とされている。「鶴の巣籠」という名の同名異曲は各地に伝わっている。古伝とあえて付されていることからも各地に伝わる曲の原形に近いと思われる。

吾妻獅子(あづまじし)

関東地方伝承曲。「雲井獅子」とともに修行の合間に息抜きの調べとして演奏されたといわれている。

山 谷(さんや)

東北地方伝承曲。各地の「さんや」系の曲で最も静かで悠久とした曲である。他に「三谷」「産安」「讃夜」の文字があてられた。

古典本曲 第三集

雪

松巌軒鈴慕(しょうがんけんれいぼ)

岩手県花巻市の松巌軒という普化宗寺に伝えられた調べ。各地に鈴慕の曲があり、奥州鈴慕・伊豆鈴慕・吉野鈴慕・九州鈴慕といった曲が伝えられています。松巌軒鈴慕は寂寥感溢れる旋律により人の知るところとなり、江戸時代にはその調べを聴いて心中を計る者が続出したため遊里での演奏が禁止されたとの言い伝えも残っています。

霊 慕(れいぼ)

東北地方伝承曲。鈴慕オリジナルとなった曲調。「鈴慕」とはその昔中国の普化禅師が、行鉢時に鈴を打ち鳴らしていたという故事から、その禅風を慕って日本にて作られた調べです。「鈴慕」「霊慕」「恋慕」といった文字があてられています。

浮 雲(うきぐも)

出所不明。大空を行く雲のように自然体で形を自在に変えながら流れていく境地を表したものと言われています。

滝

鹿の遠音(しかのとおね)

中学の鑑賞教材にも取り上げられている最もよく知られた尺八本曲です。大半の本曲が独奏曲であるのに対し、掛合い形式の二重奏という奏法がこの曲の特色です。紅葉した奥山の風景や呼び交わす鹿の生態を描写し、寂寥感も躍動感もある曲でありながら、単に情景描写に止まらず演奏者の解釈と心情を託して演奏されます。

瀧 落(たきおち)

「たきおとし」。伊豆修善寺龍源寺の普化宗寺で琴古流流祖「黒沢琴古」が朝日瀧を眺め作曲したと伝えられる。普化宗寺は一寺一律という寺独自の曲調があり、虚無僧達はその一曲に打ち込む者もいれば、全国を行鉢しながら多くの寺の曲を習得していった者もいたようです。

雲井獅子(くもいじし)

本曲の中では外曲と称され、派手・息抜・ヒルカラとも記されています。本曲の多くが読経や座禅と同義の修行の一環として吹定されたのに対し、楽しみに吹かれた曲といった意味合いです。